人口減少社会における
役割は増大する。

代表取締役 北原さん

北原さんの経歴を教えてください。

システムエンジニアを希望して、新卒で富士通に入社しました。中学生のときに、大型汎用機を使ってコンピュータのプログラミングを学ぶ機会がありました。使った言語はアセンブラで、1960年代の終わり頃です。高校に入ったときにFORTRANコンパイラが計算機センターに入ってきて、「なんて楽なんだろう」と思ったものです。ですから職業としてシステムエンジニアを志すのは自然の成り行きでした。
しかし富士通での配属は人事部でした。富士通での経歴はすべて人事・教育部門ですし、退職して以降は、経理・財務・総務・法務といった管理部門での経験を付け加えてきました。ラクラスを設立する直前は、ソフトバンク株式会社の総務人事本部長とシェアードサービスセンターの社長を兼務していました。
振り返ってみると、私のキャリアで一貫して続けてきたことは、「いかにして管理部門の業務にコンピュータの能力を利用するか」ということだったようです。ラクラスは、「人事とIT」という両方の分野での専門性を特長としています。業界を見渡すと、システムに詳しいアウトソーサはいないし、逆に人事実務を理解しているシステムインテグレータもいません。「人事とIT」というラクラスのユニークさを生み出した源流は、富士通が私を人事部に配属した日に始まっているのでしょうね。感謝しています。

ずいぶん早い時期からコンピュータに接していたんですね。

幸運だったのは、富士通に在籍している間も退職後も、常に最先端の情報技術に触れる環境にいたということです。60年代の終わりに大型汎用機を学んだ中学生というのも皆無だと思いますが、それ以降も常に私は技術革新のそばにいる道を選んできたと思っています。
中でも刺激的だったのは、80年代後半からのシリコンバレーでの駐在です。スティーブ・ジョブスが作り上げたMacintoshからNeXT、数々のPC/AT互換機、あるいはサンマイクロエレクトロニクスのSPARCワークステーションなど、リアルタイムでその誕生を見ていました。
ソフトウェアも同様です。表計算ソフトだけみてもVisiCalc、SuperCalc、Lotus 1-2-3まですべての盛衰をみてきました。dBASE2を買い込んで、英語のマニュアルを読みながら、駐在員管理と給与計算のためのデータベースを構築したりもしました。毎月けっこうな金額をCompuServeに支払ってパソコン通信もやっていました。帰任するときには、乗っていたホンダアコードを売ったお金でMacintoshとカラープリンタを買いました。それでも日本で買うよりは安かったですね。

経験がラクラスのビジネスの基礎になっているんですね。

ビジネスモデルにおいても、あるいは企業と社員の関係性においても、自分自身の経験が基礎になっていることを感じます。
まずビジネスモデルとこれを支える技術について話してみます。事業計画を立案するときに最初に考えるべきは、「何をもって差別化するか」ということだと思います。ラクラスを設立した2005年には、既に多くのアウトソーサが給与計算サービスを提供していました。彼らとは異なる付加価値をお客様に提供できなければ、事業を開始する意味そのものがありません。
差別化のポイントは最初から明快でした。ラクラスがお客様に提供する第1の付加価値は、「給与計算に必要な変動情報を社員から収集する機能を提供する」ということです。データを大量一括処理する給与計算作業は、コンピュータが最も得意とするところです。しかし大量一括処理を開始するためには、入力データが抜け漏れなくすべて揃っていなければなりません。既存の給与アウトソーサは、入力データを収集して整理する作業をすべてお客様に押し付けています。お客様の側の工数が減らないのはむしろ当然です。ラクラスは、「入力データを収集する機能を提供すること」を第1の差別化としました。
第2の付加価値は、入力データを収集する機能をもつワークフローソフトを「クラウドで提供」することです。このソフトの開発を始めたのは、クラウドという単語が登場するよりはるかに前のことです。ネットワークを通じてソフトウェアを提供しようというアイデアは昔からあったのですが、当時は通信速度が遅くしかも料金は従量制でした。通信費が高すぎて、発展できる状況にありませんでした。
しかしインターネットの将来を信じていた私たちは、開発の初期段階から「ブラウザベースでクライアントソフト不要」、「マルチテナントでありながら柔軟なカスタマイズ可能」、「トレーニングやマニュアル不要の快適なユーザインタフェース」という、今日でも有効な目標を設定しました。
そして高速のインターネット回線が定額制で利用できる環境になったとき、これらの特長が真価を発揮し始めました。日本に高速インターネットをもたらしたソフトバンクの孫正義社長を尊敬し深く感謝しています。ラクラスのワークフローの競争力は、いまだに他をはるかに引き離しています。

世の中が後ろから追いついてきたという感じですか?

そう感じます。
設立当初の営業活動は、「効率化の鍵は入力データを収集する工程にあります」とか、「自社でシステムを持たずにクラウドを利用することで間接部門の人員を抑制できます」といった思想を啓蒙するところから始まりました。 多くの企業が「重要な人事情報を社外に置くことなどできない」と考えていた時代です。
流れが変わってきたのは2013年頃からです。「人事情報を社外に置くことなどできない」と言っていた企業が、「マイナンバーのような機密情報を社内に置くことなどできない」と言い始めました。
BPOやクラウドといった単語が市民権を得てきたのでしょう。
それと同時に、ラクラスが積み上げてきた安全や信頼への実績、そして圧倒的な費用削減効果が認識され始めたのだと思います。

今後のビジネスの展開を教えてください。

ワークフローの役割は、「発生源で情報をデジタル化すること」です。PC、タブレット、スマホ、あるいはICカードリーダといった入力装置を用いてデジタル化されたデータが、データベースに蓄積され計算処理され、そしてデジタルデータのまま電子申告などにつながっていきます。もちろん紙の入出力がゼロになることはありませんが、減り続けていくのは確かです。ラクラスにおいてこの仕組みは既に完成しています。
したがって次に目指すのは、IA(Intelligence Amplification:知能拡張)という思想に基づく、人事情報処理の自動化です。給与計算に必要な知識は非常に幅広いために、経験と専門性が不可欠と思われてきました。確かに、法律を読み解き、あるいはお客様の要望を理解し、その結果として導き出される処理手順をコンピュータに教え込むのに「人事の専門性」は欠かせません。これはまさに人間だけができる仕事です。しかし、その結果としてできあがった処理手順を毎月繰り返すのが人間である必要はないのです。
IAとは、「ジュニアな人材がシニアな人材と同じレベルの仕事をできるように、コンピュータに支援させよう」という思想です。コンピュータは、シニアが教え込んだ一連の処理手順を、ジュニアのために再現します。ジュニアの仕事は、コンピュータの動きを確認することと、コンピュータができなかった処理を代行することになるでしょう。
2013年に出されたオックスフォード大学の報告書は、給与・福利厚生業務という業務は10年以内にコンピュータに取って代わられると予測しています。当社は、この予測を率先して実現する先駆者になりたいと考えています。

ラクラスには頼り甲斐のあるエンジニアがたくさんいます。

自社でソフトウェア開発能力をもつアウトソーサは、当社以外にはないと思います。ましてエンタープライズ向けのクラウドソフトウェアを、自社のリスクで開発し、自社の資産として保有している企業は、日本の全企業を見渡しても数少ないでしょう。
エンジニアに言わせると、クラウドの魅力は、「いつでも手元にある」ことだと言います。パッケージソフトや受託生産だと、売り切ったらそこで関係は終わりです。お客様のネットワーク内にあるソフトを操作することもできません。たとえ本来の機能を生かし切れていないとしても、ベンダーは手を打つことができないのです。
クラウドであれば、お客様の反応を直に目にすることができます。良ければお褒めをいただき、悪ければ改善要求を頂戴します。いずれの場合にせよ、私たちの責任において機能を継続して進化させることができます。「手離れが悪い」という特徴を生かしているのです。
日々の人事情報処理を効率化する仕事にも、エンジニアが重要な役割を果たしています。業務を知った上で情報システムを組み上げるところが、当社のエンジニアの特質ですね。

「手離れの悪さ」というのも面白い表現ですね。

パッケージソフトであれ受託開発であれ、導入作業が終わり瑕疵担保責任をとるべき期間が切れれば、お客様との関係は薄れてしまいます。そしてパッケージベンダーやシステムインテグレータは、後々の手間がかからない「手離れの良さ」を喜びます。
しかし当社のビジネスの根幹は、「お客様とのパートナーシップを長期間継続していくこと」にあります。「手離れの悪さ」こそが当社の目指すところなのです。会社設立以来、当社のサービスを不満として他のアウトソーサに乗り換えたお客様は1社もありません。もちろん当社も完璧ではありませんから、様々な課題に直面します。それらの課題を一緒に乗り越えてくれるお客様と共に成長できることを誇りに思います。

人事BPOサービスという市場をどのように見ていますか?

まず、ビジネスという視点から人事BPOサービスを評価してみましょう。「マネーの拳」というコミックに(笑)、「儲かるビジネスの3原則」というのが書かれています。「設備投資があまりかからない」、「売上が季節に左右されない」、「商品のロスが少ない」の3つだそうです。
ラクラスのBPOサービスはマルチテナントを実現しているために、売上の増加に伴って設備投資が増えることはありません。売上は、季節に左右されないどころか、他のあらゆる外部環境の変化の影響をほとんど受けません。原油の高騰も円高へのオーバーシュートも、少なくとも直接的な影響をビジネスに与えることはありません。扱っているのはデジタルデータですから、商品のロスも在庫もありません。3原則を満たしていると言ってよいでしょう。
次に市場の成長性を考えてみましょう。日本企業全体で見ると、給与計算をアウトソーシングしている会社はせいぜい1割です。日本の生産年齢人口が1995年をピークに減少していることを考えれば、間接部門に人材を投入する余裕は企業にはないはずです。本業への集中を目指す企業にとって、人事BPOは今後ますます重要な選択肢になるでしょう。

その兆しは現れていますか?

明確に現れています。 2013年頃を境に、これまでアウトソーシングに保守的だった日本の大企業からの受注が増えています。ラクラス設立当初、お客様の3分の2は外資系でした。今では8割が日本企業です。初めてアウトソーシングする、という企業の割合も増えています。
「間接部門の効率化」という理由に加えて、「人事・給与ソフトウェアを自社で保守管理したくない」という理由を挙げるお客様も多いですね。エンジニアという希少な経営資源を社内システムの保守に使わないという判断は、今後増えていくでしょう。

3原則に合致したビジネスで、しかも市場が成長するとなると、
競合も激しくなるのではないでしょうか?

もちろん他社が参入してくる可能性はあります。決して気を緩めてはならないと思います。当社は優れた技術力を持っていますが、技術は模倣できるものであり、決定的な差別化要因にはなりませんからね。
ただ、「クラウド・ワークフローによるBPOサービスを先行して開始した」ことによるアドバンテージは間違いなくあると思います。先行による最大のアドバンテージは、「お客様の要望を知っている」ということです。ワークフローというソフトウェア、およびBPOというサービスを先行して提供しているからこそ、これを叩き台として一段階上のお客様の要求を知ることができます。ラクラスは、先行者としてのリードを広げるべく要求に応え続けていきます。
第2のアドバンテージは、「当社のサービスが損益分岐点を超えている」ということです。大企業に利用いただくだけの安全性と信頼性をもったクラウドを実現するためには、相応の開発投資が必要です。売上が損益分岐点に達するまでの間の運転資金も必要です。それだけの投資に見合うほどに、人事BPOサービス市場の将来性を高く評価する企業が今後登場するかどうか、注意深く見守りたいと思いますね。

話は戻りますが、先ほど「企業と社員の関係性も経験に基づいている」
という話が出ました。

シリコンバレーで仕事をしたら、日本のやり方に戻れなくなってしまったというのが正しいかな。その後に勤めたソフトバンクも、まったく日本的な会社ではなかったですからね(笑)。
応募する方にまず申し上げたいことは、企業と社員はまったく対等なパートナーだということです。応募くださる方と面接する当社の役員・社員はまったく対等です。たとえ新卒だとしてもこの原則は変わりません。応募者が良い勤務先を探しているのと同じく、当社は良い人材を探しているのです。そこに差はありません。
性別・年齢・国籍・肌の色・既婚未婚の別など、個人の属性を人事上の判断の基準にすることもありません。当社にとって重要なのは、「課題を解決する」という役割を果たすことができるかどうかという1点です。
ですので、面談ではリラックスして臨んでいただきたいと思います。お互いにとって不幸なことは、「入社したら違っていた」という状況です。面談のときとまったく違う会社だったら応募者は困惑するでしょう。面談のときとまったく違う人物だったら当社も困惑します。そのような事態に陥らないように、率直な対話ができることを望みます。

私は新卒入社ですが、ラクラスほど和やかな採用面接は他にありませんでした。

体や心が硬くなったら最高のパフォーマンスを出すことはできません。大事なのはリラックスすることです。
採用面接の場だけではなく、入社してからも同じですよ。ラクラスでは、「怒ること」や「不機嫌」は公式に禁止されています。課題があれば解決しなければなりません。でも、怒ることで解決に向けてのアイデアが出てくるはずもない。不機嫌になることで対話が途切れてしまったら、チームとして働くことはできない。課題解決の障害となるあらゆる言動が、ラクラスでは禁止されています。
ミスを犯した社員が怒られることもありません。そのミスで困っているのはお客様です。当社がやるべきことは、ミスをリカバリーし、再発しない方法を考え出し、それを早期に実現することです。上司、役員、そして社長の役割は、ミスからの回復という課題解決のために社員を支援することです。ミスを怒ったところで課題は解決しません。
とはいえ、周囲の力添えに感謝しない社員とは一緒に仕事したくなくなるでしょうけどね。

「課題解決を楽しむ11か条」が制定されました。

昨日よりも今日は、ほんのちょっとだけ前進していたい。そう思いませんか。そのためには、何が不十分だったのかを認識し、それを課題としてとらえ、解決していかなければなりません。その繰り返しが、企業と社員の成長に結びついていくのだと思います。
給与計算にしても、先月と同じだけの作業を、先月と同じだけの工数をかけて、先月と同じだけの高い品質で仕上げるだけでは評価に値しません。先月よりもほんのちょっとだけ多くの満足をお客様に与えること、先月よりもほんのちょっとだけ工数を削減すること、その努力の積み重ねが重要だと思います。
それは決して難行苦行ではありません。解決に向けての引き出しを持ち寄り、チームとして対話を重ね、作り上げたシミュレーションの通りに現実が動いたとき、私たちは喜びを感じます。そしてそれは自分の引き出しを増やし、自分のキャリアに新しい1行を付け加えることにつながります。
人事BPOの先駆者ラクラスにとって、登場する課題の多くは初物です。この世で初めての課題に楽しんで取り組んで欲しいと思います。

11か条に番外編があるのもラクラスらしいと思います。

これも経験から書かれた番外編ですね(笑)。
美味しいものを食べて飲んでは、ラクラスでの生活の重要な一部ですよね。

最後にラクラスにとっての解決すべき課題を教えてください。

人口減少社会にある日本において取り組むべき最大の課題は「働き方改革」であると認識しています。お客様に対しては、人事とITの専門家として、労働時間の適正化に向けた仕組みを積極的に提案していきたいと思います。クラウドで提供するワークフローやあらゆる人事情報を一元的に管理するデータベースの機能を強化していきます。
同時に社内においても、「働き方改革」を推し進めていきます。この流れは不可逆であり、働き方を改革できた企業しか生き残れない時代がくるでしょう。システムによる効率化や業務プロセスの標準化といった取り組みに留まらず、仕事の進め方に対する思い込みや、お客様との付き合い方まで含めて改革していきます。

ラクラスというブランド価値の向上も重要な課題です。サービスというものは、実際に使ってみるまでその真価がわかりません。しかし企業向けのサービスとなると「試しに使ってみる」ことができません。「今月だけラクラスで給与計算してみる」「駄目だったら元に戻してみる」といったトライアルはできないのです。したがって、既にサービスを利用いただいているお客様からの評価が、重要な鍵を握ります。
ラクラスのサービスを利用するお客様は数百社となりました。お客様が、ラクラスというブランドの価値を決めてくださっています。今後ともラクラスは、お客様と長期のパートナーシップを結んでいただくのに必要なあらゆる活動を強化していきます。同時に、様々な機会をとらえて、ラクラスについて発信することにも努めていきたいと思います。

もう一つの課題は、社員のエンプロイビリティを向上させることです。私は、企業が社員に与えることができる価値は、エンプロイビリティをおいて他にないと思っています。
他社から声もかからないような社員がいくら大勢集まったところで、企業が成功することはありません。「他社から引き抜かれるほどの力量をもつ社員が、それでもラクラスを選ぶ」という状況を作り出すことが理想です。企業も社員も自分の魅力を互いに高め合っていくという緊張関係があって初めて、共に成長できると思うのです。
繰り返しになりますが、そのためには「課題を解決する」という実績を積むことが大事です。ラクラスは、社員がエンプロイビリティを向上させるための最高の場を用意したいと考えています。

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